外国株式インデックス MSCIのKOKUSAIとACWIの比較

 分散投資する際の、外国株式のインデックスを「MSCI KOKUSAI(除く日本)」を使うことが一般的だ。確定拠出年金の商品に限らず、外国株式投資信託は上記インデックスをベンチマークに使っているケースが一番多いだろう。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の平成26年10月の「中期計画の変更」のP13に、『これまで、外国株式の収益率の算出や運用状況を評価する際に用いていたベンチマークは、先進国の 上場株式市場を対象とした「MSCI KOKUSAI」でしたが、新興国の上場株式市場も含めた「MSCI ACWI(除 く日本)」に変更しました。』とある。理由は書かれていない。違いがどれだけあるのか比較してみた。

 まずインデックスの説明をする。
 KOKUSAI インデックス。先進国23か国から日本を除いた22か国の大型株と中型株から構成されている。ちなみに、日本を除く前は、Worldインデックス。
 ACWI(除く日本)は、これに新興国24か国を加えたものだ。より、分散範囲が広がるため、リスク(標準偏差)は少なくなると思う。

 2014年3月を100として、2019年3月までの5年間の変動をグラフにしてみた。
円に換算してある。 2019年3月に上になっているのが、KOKUSAI。ご覧いただいたように、ほとんど変わらない。

 次に横軸にリスク(標準偏差)、縦軸にリターンをとって、同じ期間にで比較してみた。ACWIの方が、リターンもリスクの若干低い。

2014年3月〜2019年3月

 過去1年間を見てみよう。 リターンの差が大きくなっている。 ここ最近新興国の経済成長が、先進国にくらべ低くなっていることがうかがえる。

2018年3月〜2019年3月

新興国24か国といっても、中国の経済規模がダントツに大きい。現在(平成31年3月)米国が中国に対して、「WTOのルールを守りなさい」という要求を突き付けている。そのため、中国の経済成長に陰りが見えている。経済成長率は6.9%といっているが、怪しい。
 GPIFは、世界株式のベンチマークをACWI(除く日本)変更してしまったが、元のKOKUSAIに戻したほうがよいのではないだろうか。

資産配分(ポートフォリオ)の評価にリスク(標準偏差)を加えるべし

 資産運用状況の報告やら、企業年金基金の決算やら、評価方法が不満だ。
 個人資産であれ、公的年金資産であれ、始めるにあたって、リスク(標準偏差)とリターンのバランスで、検討してるではないか。そうなのであれば、どの資産が上がった、下がった、だけではなく、リスク(標準偏差)がどうなったのか、報告すべきだ。

 ひょっとしたら、同じリスク(標準偏差)で、もっとリターンの高いポートフォリオがあるかもしれないじゃないか。
 リスク(標準偏差)が分かれば、発展的に物事を考えられるのだ。

 リターン(収益額、収益率)の報告と、さらにリスク(標準偏差)を加えた報告について比較してみよう。

 最初は、リターンだけの報告について書く。
 一つの例として、日本の公的年金を運用している、GPIF( 年金積立金管理運用独立行政法人)https://www.gpif.go.jp/  のサイトを見てもらいたい。
 収益額、収益率しか掲載していない。

GPIFのポートフォリオを例にとって、説明してみよう。
(実際の金額ではなく、各種インデックスデータを使って計算している)

配分割合は、日本債券35%、外国債券15%、日本株式25%、外国株式25%。
最初を100として、途中資産の出し入れはしていない。
黄、オレンジ、青、緑は、それぞれの資産を表す。
黒太線がポートフォリオの変動。
上は、平成30年2月から31年2月までの月次(月末)データ。
1年間の運用利回りは-0.23%。
下は、平成26年10月から 31年2月までの月次(月末)デー タ
この期間の運用利回りは、4.89%。

過去1年間の変動
平成26年10月から

「 短期ではマイナスになっているが、長期ではプラスになっており、年金資産は十分に確保できている。継続してこのポートフォリオを維持する」
とか説明されれば、「そうなんだ」と納得するしかないではないか。
つっこみようがない・・とも言える。

次に、リスク(標準偏差)を加えた説明をする。
横軸にリスク(標準偏差)、縦軸をリターンにしたグラフだ。
黄、オレンジ、青、緑の●は、それぞれの資産のリスクとリターンを表す。
貴緑のがポートフォリオのリスク・リターンである。
このグラフから何が読み取れるだろうか。

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  • 緑の●。外国株式はリターンが高い。
  • 青の●。日本株式は、外国株式よりリターンが低く、リスクが高い
  • オレンジの●。外国債券は、日本債券に比べリターンは少しだけ高いのに、リスクが高い。
  • 黄緑の■。分散投資は、全体の中間くらいになる。(当たり前だけど)

 上記のことを踏まえ、GPIFのポートフォリオより、ましなポートフォリオを考えてみた。黄色の だ。分散投資の業界では、リスクが低くて、リターンが高いポートフォリオは、より優れていると言える。
 上記の傾向が、今後も続くと予想するのであれば、ポートフォリオを変更したほうがよい。ということになる。

 運用実績の報告をする立場であれば、リターンだけを報告しておいた方が楽だ。突っ込みようがないのだから。
 報告を受ける立場の人は、、各資産クラスのリターンとリスク(標準偏差)、ポートフォリオ のリターンとリスク(標準偏差)はどうなっているのか、要求しよう。 もっと良い(リターンが高くて、リスクの低い)ポートフォリオ(資産配分)が見つかるかもしれない。

 リスク(標準偏差)を要求しても出してくれないことがある。その時は、基準価格の月次データをもらってきて、エクセルで計算すれば簡単だ。エクセルの扱いが得意でない人は、弊社が代行できる。 

各資産の計算は下記インデックスを使用している。
日本債券 NOMURA-BPI
外国債券  FTSE  Non-JPY World Government Bond Index
日本株式 東証株価指数(TOPIX)
外国株式 MSCI KOKUASI