投資信託を長期運用した場合。リスクは上がるのか、それとも下がるのか。

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投資信託の長期運用。リスクは上がるのか下がるのか。答えから先に描けば、「上がるとも言えるし、下がるとも言える。」いったいなんのことだ。「長期運用 リスク」で、ネットで検索すれば、諸説出てくる。一度、他所でどっぷり浸ってから、戻ってきてほしい。
投資信託の長期運用を考える場合、リスクについては代表的な2つの考え方がある。

リスク=標準偏差

まず一つ目は、投資信託で言うリスクとは、価格の変動のことで、標準偏差で表す。リスク=標準偏差。「リスク」を「標準偏差」と定義してしまえば、標準偏差以外には考えられない。(投資信託商品や資産割合のリスクについて書いてあるのは、1年あたりの標準偏差が一般的である。)長期運用により標準偏差は上がるので(n年後の標準偏差は、標準偏差に√nをかける)、リスクも当然上がることになる。とてもシンプル。以前のブログで書いたので参考にしてほしい。

リスク⊃年平均リターンの上下巾

もう一つの考え方として、長期運用における「リスク」を表現する場合、「年平均リターンの上下巾」を使うことがある。このことを説明するのには、過去の実績データを用いる。

⊃は、全体集合の「リスク」の中に部分集合の「年平均リターンの上下巾」が含まれる。ということを示している。

MSCI KOKUSAI インデックス(円換算)1985年1月~2017年3月を使って計算してみた。
まず、n年後の最低値と最高値をもとめる。
下のグラフは。分布図。

運用期間ごとに、最低 平均 最高を記す

  • 1年  最低45.4 平均109.5 最高162.6
  • 5年  最低55.6 平均158.3 最高351.1
  • 10年 最低62.1  平均222.8 最高526.0
  • 15年 最低126.2 平均296.4 最高518.6
  • 20年 最低235.6 平均447.3 最高796.0
  • 25年 最低340.1 平均556.5 最高806.2

このデータから、年平均リターンを計算する。
元本の100を差し引いてから、年数で割る。

  • 1年  最低-54.6% 平均9.5% 最高62.6%
  • 5年  最低―8.9% 平均11.7% 最高50.2%
  • 10年 最低-3.8% 平均12.3% 最高42.6%
  • 15年 最低1.8% 平均13.1% 最高27.9%
  • 20年 最低6.8% 平均17.4% 最高34.8%
  • 25年 最低9.6% 平均18.3% 最高28.3%

数字では分かりにくいのでグラフにしてみた。

年平均リターンの上下巾は、投資期間の年数が増えるにしたがって、減少している。このことをもって、長期運用の「リスク」は低くなる。と説明しているのだ。

ちなみに、平均の年平均リターンが(オレンジの線)が長期になるほど増加する傾向があるが、本来複利計算で割り戻したほうがいいところを単に年数で割りもどす年平均で計算しているから、長期運用のほうがリターンが高くなるように見えているだけだ。

 

投資信託の長期運用において、標準偏差は上がる。しかしながら、年平均リターンの上下は巾は減少する。別のいい方をすると、収益率の幅は安定する。したがて、運用期間が短い時にくらべ、長くなると、よりリスク(標準偏差)の高い商品や資産割合を選んでもかまわないということになる。

要は、「リスク」をどのように定義するか。

投資信託や株式売買において、「リスクとは、基準価格の変動のこどで、標準偏差であらわされる。」と定義すると、長期運用によってリスクは増大する。期待リターンに対するブレ幅は広がっていく。
長期運用においてリスクは「年平均リターン上下巾」によって判断する。と、定義すれば、長期運用のリスクは減少する。後者の代表は (注)バートン・マルキールであろう。
筆者は、上記に加え、「元本割れ確率」を長期運用の際の危険性を、評価する指標として追加することを提案する。

長期運用の危険性(広義のリスク)のまとめ

  • 標準偏差(狭義のリスク)
  • 年平均リターンの上下巾
  • 元本割れ確率

上記3つの単位はすべて%だが、例えば、あるポートフォリオ(資産割合)の、標準偏差20%、年平均リターンの上下巾は20%、元本割れ確率20%とした場合、元本割れ確率が一番わかりやすいのではないだろうか。
また、「年平均リターンの上下巾」は、加工のデータを扱うので計算が面倒だが、元本割れ確率は期待リターンと標準偏差から計算できるので、扱いやすい。

投資信託の長期運用は、標準偏差(リスク)は上がるが、元本割れ確率は下がる。リスク(1年あたりの標準偏差)の高い商品でも、20年30年と、持ち続けることにより、元本割れ確率はかなり低くなる。0に近いと言ってもいい。他のブログでも述べたが、長期運用はハイリスク商品を選ぶべし。45歳までは、外国株100%をおすすめしたい。

 

(注)バートン・マルキール「ウォール街のランダムウォーカー(原著第11版)」(井出正介訳、日本経済新聞社)
435ページ「株式投資の投資期間と年平均リターンのちらばり方(1950年~2013年)」 参照

 

 

 

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